Short Story…
Short Story No 04
赤
ここは、小さな町の交差点。
暗闇を、点滅信号の赤だけが道路を照らしている。
片田舎の道路は、ひっそり沈み、静寂と闇が道路を包んでいる。
僕はこの町で生まれた。
そしてこの町が好きだった。
今は、地元から遠く離れた場所で暮らしている。
久しぶりに、帰ってきたんだ。
目を瞑る僕は、今までの光景を、ありありと思い出していた。
小学生の時、好きな人がいた。
ただ遠くで見ていた。同じクラブに入ったのも少しでも気を引きたかったからだ。
今では、顔も忘れてしまった。
中学生の時、仲がいい友達がいた。
何をするのも一緒で、バカみたいなことで笑ってた。
今では、遠くの場所に引越し、たまに電話がかかってくる程度だ。
高校の時、楽しかった。本当に楽しかった時代だったと思う。
仲の良い友達も多くでき、彼女もできた。友達は今度結婚することに……
そうだよ。思い出した。
友達が結婚することになったから、今日ここに帰ってきたんだ。
でも、何でこんなこと、思い出しているんだろう。
ふと、目を開ける。
目を開けると、そこに広がる光景。
赤、赤、赤。
生暖かい血が、大量に頭から流れ出してるのがわかる。
口の中には鉄の味が広がり、喉はかすれ、
声を出すことも体を動かすこともできない。なぜ、こんなことになっているんだ?
思い出した。車に、はねられたんだった……
そうか、これが走馬灯ってやつか。
死にたくない
誰も車の通ることのない静寂の道路の上
僕は、声にならない声で、助けを求めるべく叫ぶ。
この声は、誰かに、届くだろうか?
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