Short Story…
Short Story No 06
願望2
「願いを叶えてやる」
どこからともなく、声が聞こえた。
鼻ピアスをしている男は、歩みをやめ振り返る。
周りには誰もいない。
男は顔を顰めた。
「わけわかんねぇし」
彼は呟き、また歩き出した。
「願いを叶えてやる」
また、声が聞こえた。今度ははっきりと。
周りには誰もいない。どうやら彼の頭の中から聞こえてくるようだった。
「マジ言ってんのかなぁ?」
彼は、近くにあったベンチに腰をかけると、
なにやらぶつぶつ呟き始めた。
「願いを叶えてやる」
また、声が聞こえた。
男は、試しに
「お金ください。お金。ビックマネー」
なんとなく、言ってみた。
「わかった」
男は待ったが、何も起こらなかった。
ぼんやりと、辺りを見渡すと、ボストンバックがあるのが目に入った。
「ん?」
男は近寄り、辺りを確認すると、中を覗いた。
そこには数え切れないくらいの札束が詰まっていた。
狐につままれたような気分だった。
それでも平静を装い、バックを持ち自分の家へ走った。
部屋に戻り鍵をかけると、バックを置き、男は、ベットに座った。
興奮が収まらなかった。
「願いを叶えてやる」
また声が聞こえる。彼は驚いたが、
この幸運を逃すまいと願い事を言った。
質問される度に、彼の部屋の天井近くから、
彼の欲しがったものが降ってきた。
次第に、男の部屋は物で埋め尽くされていった。
「願いを叶えてやる」
男は、欲しいものを考え、笑顔で言った。
「じゃ、車くれよ、車。大きいヤツ」
すると、彼の頭上に、車が……
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