Short Story…
Short Story No 20
笑顔
彼はいつも笑っている。
嬉しい時も、楽しい時も、悲しい時も、いつだって彼は笑っている。
いつでも彼は笑っている。
皆は、彼を指し、陰で噂した。
「何でアイツいつも笑ってんだ?」
「あいつは、いつも幸せそうでいいよな」
「馬鹿みたい」
「この前、怒られてるのに笑ってる彼を見たわ、余計に相手を怒らせちゃったみたい」
「要領がいいのか悪いのか、わからねぇ奴だよな」
「いやいや、なんとなくだけど癒されるぜ?」
「どうせ何も考えてないだけだろ?」
「変人だよな、アイツ」
「毎日が楽しすぎるんじゃないの?」
「恋人の前でも、あんな感じなのかな?」
「ニヤニヤしやがって、何がおもしれぇんだ?」
「なんか憎めないよね」
「悩みがない人っていいよね」
「笑わないとやってられないんじゃないの?」
「えー、何かの病気じゃない?」
「あぁいう奴が怒るとマジ怖そうだよな」
「ん?あぁ、いつも笑ってるね、何でだろ?楽しいならいいじゃん」
「いやいや、きっと辛いことがあったんだよ。間違いないね」
噂は広がっていく。
だが、なぜ笑っているのか、そのことは誰もわからなかった。
ある一人の男がこう言った。
「俺、あいつが泣いてるの見たたことあるよ」
皆は驚いて、その時の様子を男に聞いた。
「いや、あいつの奥さんが亡くなった時かな?
葬式の時、柱の陰に隠れて、嗚咽を漏らしてたんだよ
あいつ、いつも笑ってるだろ?すごく意外でさ。
やっぱり今までも、辛かったのかって、その悲しみを隠していつも
笑ってたのかなって思ってさ、俺、見てられなくて、声をかけたんだよ。
『なぁ、気を落とすなよ。お前の気持ちはよくわかるよ』
ってさ。そしたら、あいつ、涙を拭いたんだよ。
そして、今まで見た中でもすげー嬉しそうに笑って
『おいおい、勘違いしないでくれよ、嬉しくて泣いてるんだから』
って言ったんだ。」
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