Short Story…
Short Story No 21
眠らない男
友達に、眠らない男がいた。
いつも目を充血させ、目の下には隈をつくり、
疲労のせいか顔色も悪い。
それでも男は幸せそうに笑っている。
眠らないというのは御幣がある。
正確に言えば、ほぼ眠らないが正しい。
男の平均の睡眠時間は、三時間程度しかない。
彼は、得意げに笑いながら、いつも言っていた。
「人は人生の三分の一をを眠って過ごすって話、知ってるか?
なら、もし、ほとんど眠らずに過ごせば、人生で使える時間は、
他の奴と比べて大幅に多くなる。。
いつもダラダラ過ごしている奴がいるだろ?
あぁいうのはホント時間の無駄だよ。
体力や体温を維持するために必要なのは、それほど多くの時間を必要としないし、
必要なのは睡眠の質。
睡眠は、起きている時間と比例するわけじゃない。
俺は、この生活が好きだし、時間を有効に使ってる。
どれだけ効率よく睡眠をコントロールするか?
習慣をいかにして変えるか?
それが問題であって、トレーニングさえすれば、睡眠だって、
自分の思い通りにコントロールできるものさ。俺の考えは正しいだろ?
この考えは有意義だって思わないか?」
その友達は、三十歳になる前に死んだ。
彼の人生が、有意義だったかどうかなんて、僕にはわからないし
きっと、彼にしかわからない。
ただ、言えることがある。
今は、ゆっくり眠れているんだろうなってこと。
それともうひとつ。
僕は彼に考えに感化され、賛同した一人だということ。
僕も、彼と同じで、一日に三時間程度しか眠っていない。
何だか、ひどく疲れた。
今日は、ゆっくり眠ってしまいそうだ。
目は、覚めないかもしれない。
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