Short Story…





Short Story No 25
相談



小さなテーブルに、ウェイトレスが、水をコップに入れて持ってくる。

「ご注文が決まりましたら、お呼びくださいませ」

そう言うと、ウェイトレスは隣のテーブルの食器の片付けを始める。
ランチタイムが終わったばかりで忙しいせいか、近くのテーブルいくつかには
まだ片付けられてない食器が、ちらほらと見える。
それを尻目に、男は、話し始める。

「久しぶり、どうよ、元気だった?」
「まぁまぁだな、そっちは?」
「最近、何だか知らないけど眠くてさ」
「あ、わかる。俺も俺も」
「季節の変わり目だからかな?」
「だろうな。あーマジ眠い。で、話って何?」
「いや、女のことなんだけど」
「女?あぁ、お前らまだ付き合ってんの?」
「そうなんだよ。ようやく1年。結構長くない?」
「奇跡だな」
「奇跡ってそんな」
「冗談だよ。で、何なんだ?相談って?」
「いや、ちょっとね、彼女が浮気してるような気がするんだけど」
「マジで?確定?」
「うん。いや、確定じゃないんだけど」
「じゃ、違うんじゃねぇの?」
「でも、怪しすぎるんだって」
「え、何が怪しいの?」
「なんていうか、電話とか」
「他の男からかかってきてるとか?」
「そうみたいなんだよね」
「それだけ?」
「いや、メールとかも」
「うわっ、見たの?」
「うーん、まぁ」
「うわっ、お前最悪。マジで言ってんの?」
「いや、しょうがないって、ホント」
「見ないって普通。で、何て入ってた?」
「消えてるんだよ」
「は?」
「だから、メールが届くだろ?で、ソッコー消してんのアイツ」
「あぁね」
「怪しくない?」
「怪しいとは思うけどなぁ、問い詰めたら?もしくはカマかけるとか?」
「そうね、でも何か嫌なんだよね、そんなの」
「嫌とか言っても仕方ないだろ?俺なら言うけどな」
「そうだな……言うか」
「言った方がいいって、マジで」
「かなぁ」
「少し考えようぜ。ってか、メシ注文しようぜ」
「そうね」
「じゃあ、俺は……」


注文を聞き、ウェイトレスが厨房に戻っていった。
ウエイトレスは厨房のコックに伝票を渡し、隣で
食器の整理に勤しんでる、もう一人のウエイトレスに言った。

「あの5番テーブルの客さぁ、マジキモイよ。」
「えっ、何で?どうしたの?」
「ずっとブツブツ独り言言ってんの、アイツ、やばいって」
「嘘、引くよね、怖っ」

男は、一人で、何事か話し続ける。
そしてその話は、まだ終わりそうにない。




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