Short Story…





Short Story No 28
始業式



夏休みも終わり始業式の後、少年は、
6年1組の教室で静かに椅子に座り肘をついていた。
久しぶりの再会を喜び、クラスメイト達は騒がしい。
ただ、少年は、そんな気にはなれなかった。

突然、後ろから頭を叩かれる。
後ろを振り向くと仲の良い友人だった。

「おぉ、久しぶりー」
「あぁ、久しぶり」
「なんだよ。素っ気ないな、どうしたんだよ?」
「別に」
「それよりさ、夏休みどこか行った?」
「ほとんど出かけてないよ」
「この前家族で、遊園地行くって言ってたじゃん?」
「あぁ、遊園地ね。行ったよ。でも行かなきゃよかった」
「そう?楽しかったんじゃないの?」
「いいや、最悪だった」
「まぁ、今年も暑すぎたしな。行列とか面倒だし」
「そうね」
「俺な、海行ったぜ、海。すげー綺麗だった。最高だよ」
「そうなんだ」
「近くの汚ねぇ海とかじゃなくてさ、沖縄よ沖縄」
「ふぅん」
「知ってるか?本当に綺麗な海って緑っぽいんだぜ、エメラルドみたいなんだぜ」
「写真で見たことあるよ」
「写真と実物はちげぇよ。すごかったぜ、ほんと」
「旅行で?」
「いや、アオの翼」
「あぁ、臨海学習のアレか」
「女子とかもいっぱいいたぜ。夜は自分でメシとか作ったしな」
「へぇ」
「一緒に行きたかったなぁ。来ればよかったのに」
「そうだな」
「夜はアレだぜ、あの、体育館みたいなところで皆で寝たんだ。
暑いこと暑いこと。あとは、キャンプファイヤーもしたし肝試しとか」
「ふぅん」
「肝試しとか、怖くねーよとか思ってたけどやっぱ、怖いもんだな
いつ、出てくるかとかわかんねぇし、お化け役も気合入りすぎちゃってて
ウォォーって叫びながら追いかけてきたし、意外と怖かったな」
「怖くないけどな、そんなの」
「お前の話も聞かせろよ、絶叫系とか、乗ったんだろ?なぁ、どうだった?」
「あぁ、すげぇ怖かったよ。」
「お前、ビビリじゃん。そんな怖かったのかぁ?」
「あぁ」
「どんなのよ?何?角度とかスゲーの?」
「そういうわけじゃないけど、俺が乗った奴は、回転がウリの奴」
「アウトバーン?」
「いや、ダブルループ」
「はぁ?ダブルループってたいしたことないじゃん」
「そうなんだけどさ」
「俺も乗ったことあるけど、全然怖くねぇよアレ」
「そうなんだけど、回転のとこあるだろ?1回転するとこ」
「あぁ」
「多分、あそこかな」
「怖かったのが?」
「いや、弟が落ちたのが」




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