Short Story…
Short Story No 29
言い訳
「僕らはずっと一緒なんだ。ずっとね。向こうでは君の気持ちも、きっと変わってる」
男の右腕にはできたばかりの傷。
そしてその手はネクタイを握っている。
彼は、彼女に聞いた。
「ねぇ、何かして欲しいことない?何でもするよ」
意地悪な考えが彼女の頭によぎった。
別れを告げたかったのか、彼を試したかったのかはわからない。
彼女は言った。
「じゃあさ、アンタ、マジウザイから死んでよ」
彼は驚き、首をかしげ下を向いた。
「できないでしょ?消えてよ」
彼女のその表情は、勝ち誇っている。
ゆっくりと彼は彼女の背後にまわる。
さりげなく、静かに。
そして男は、女の首に手を回し力を込めた。
抵抗され、抗う女の爪が男の右腕に傷を作る。
どのくらい首を絞めただろう。
彼女はもう、息をしていない。
男は、ボソボソと呟き、ドアノブにネクタイを巻き、首を吊った。
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