Short Story…
Short Story No 50
雨のような
雨のような音がする。
私にとっては、心地よい音。
書いちゃった。
でも、送るつもりはなかったんだけどな。
やっぱりむかついてたのかな?
つい、送信って。
着信も拒否ってやった。
もう、すべて嫌なの。
あなたの存在とか。
私は、おとなしい性格だけど
我慢できる方じゃないの。
知ってるよね?
書いちゃった。
彼、怒るだろうな。
ひどい文面だもの。
『もう二度と会いたくない。死んで』
これだけだし。
自分で書いたのに、ちょっと複雑な気分。
でも、むかついてたんだから、仕方ないよね。
きっと、何のことかわからないだろうな。
何で自分が、こんなメール受け取るのかなんて
一生わかんないと思う。
私だって、気まぐれだし。
いつもはこんなことしたりしないんだけど。
すぐに返事が来た。
電話は拒否ったけど、メールはまだ拒否ってないから。
『死んで???なんでそんなこと言うの?何かした?理由教えて。別れたくない』
必死になっちゃって馬鹿みたい。
少しだけ、楽しい。
でも、もう、おしまい。
『うざいし、むかつくから。死んで』
書いちゃった。
当然の権利だよね。
メールも拒否った。
これでもう、メールはこない。
さっきの分の受信メールも、送信済みメールも消した。
迷惑メール用のフィルターもかけた。
ケータイは便利だけど、面倒。
だいたい、浮気なんてするから悪いんだよ。
私のせいじゃないから。
登録されてるその女の電話番号も、違う番号に変えてやった。
私は、彼の携帯をそっと、元あったスーツのポケットに戻す。
どんな女だったの?いや、聞きたくない。
雨のような音が止まった。
きっと、彼がシャワーを浴び終わったんだ。
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