Short Story…





Short Story No 51
カネゥオ!



僕がバイトしているコンビニ。
時間は、深夜。

人影がし、自動ドアが開いた。

「いらっしゃいませ」

やる気なく、僕は頭をさげ、挨拶する。
その客は、覆面をしていた。
黒のTシャツ、薄汚れたジーンズ。
Tシャツから覗く腕は、褐色に近く浅黒かった。
手にはレザーの手袋、

そして包丁。

客は誰もいない。当たり前だ。
いないのを見計らって入ったんだろう。
当然の考え、この時間帯を狙うというのも、セオリーだ。

強盗は、片言のでたらめな日本語で喚く。
すごい剣幕だ。よく聞き取れない。
覆面から垣間見える目は血走り、充血している。
緊張しているんだろうか。

強盗は小さなバックをレジの前に置き、

「ダセ!カネ!カネゥオ!」

強盗はレジを指差し、包丁を振り回しながら叫ぶ。

僕はレジを開け、手を両手に上げた。
強盗は僕の様子を、警戒し、慎重に見つめ、
レジから千円札を握りバックに入れる。
そして、小銭のボックスをはずし床に落とす。
大量の小銭が、大きな音を立て床に散らばる。
一万円札を掴んだ。

僕は、両手を上げたまま、その光景を見つめる。
強盗は、包丁を僕に突きつけ、隣のレジも開けるように顎で指示した。
僕は、怯えた素振りで、指示に従う。

強盗は、両方のレジから金をバックに詰め終わると
包丁を振り、何事か喚きながら
ゆっくりと自動ドアを開け、外に向かい走って行く。

僕は、煙草の陳列台の上に置いてあるカラーボールを掴み、
強盗を追って外へ走った。
強盗との距離は、もう随分離れている。

しばらく、追いかけ、カラーボールを投げた。
カラーボールは強盗に当たることもなく、
アスファルトに落ち、割れた。
僕は、肩で息をしながら、コンビニへと戻る。

コンビニに戻り、防犯スイッチを押した。
外の回転灯が、赤々と光り始める。
すぐに、警察がパトカーでやってくるだろう。
そして、僕は、事情聴取を受けるだろう。

「妙な日本語で、脅されたんです。
よくわかりませんが、外国人だと思います」

聞かれたら、そう答えよう。
同情されるかもしれないが、あの店長の性格だ。
事件が風化すれば、ちまちまグチグチと、遠まわしに
文句を言ってきたりするんだろうな。
でも、いい。
計画が成功すれば、それでいい。

アイツは今頃、僕の家で、
褐色のファンデーションを落としてるところだろうか。



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