Short Story…
Short Story No 63
見張り
「できないって」
「大丈夫だよ。お前ならできるって」
「無理だよ、やったことないし」
「簡単だよ。馬鹿でもできる」
「そうかもしれないけど自信ないよ」
「おいおい、情けないな」
「そんなこと言っても」
「お前はできる奴だ。いつだって応援してるんだぜ」
「無理だって」
「無理と思うから無理なんだよ。いいか、お前、昔、告白したよな。
絶対無理だって言ってたのに、OKもらっただろ。」
「でも、もう別れたし。優柔不断なのが嫌いって言われた」
「それに、無理だって言われてた名門校にも合格しただろ?
お前から合格の話を聞いた時、俺はお前を誇りに思ったよ。すげぇなって」
「でも、どんな学校かわからないし、行って後悔するかも」
「いや、俺が言いたいのはそんなことじゃなくて、お前のその、なよなよした性格についてだ」
「昔からだし、しょうがないよ」
「違う。お前に足りないのは、自信だ。
お前は自信さえあれば、何でもできるって俺は思ってる。
頭だって良いし、意外と大胆だしな。」
「そんなことないのに」
「いや、お前は俺の知ってる奴の中で、一番だ。でもな」
「でも?」
「行動力がないんだよな。積極性っつうかさ、何で行動に移さないんだ。
もったいねぇよ、動かなきゃ、何も変わらないんだぜ」
「動くか動かないかなんて、自分で決めるよ」
「違う、お前には背中を押してくれる奴が必要だ。告白や進学しろって言ったのは俺だろ。」
「感謝してるよ。なんだかんだ言っても・・・」
「いや、わかってないな。
俺が言わなきゃお前はそのチャンスにも気づかなかった。
チャンスってのはいつだって平等じゃないんだぜ。
気づかなきゃそれで終わり。他の奴がそのチャンスをものにする。
そしてお前は指をくわえ、羨ましいって嘆くだけだ。
お前には俺と違って才能がある。力がある。俺はもったいないと思うんだよ。
その力や才能を使わないことが。」
「本当にもったいない?」
「あぁ、もったいないぜ。そう思う」
「そうだね。わかった。やるよ」
「よし、じゃあ、早く盗んでこいよ」
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