Short Story…
Short Story No 66
後輩
「こんばんは、お邪魔します」
テニスサークルの後輩が家に遊びに来た。遊びというよりは相談があるらしい。
いつ以来だろう、部屋に誰かを呼ぶなんて。
随分久しぶりのような気もする。いつも一人だから、何だか新鮮だ。
「どうも、あ、すみません、お邪魔でした?」
「いや、別に。まぁ、上がれよ」
「うわー綺麗ですね、すごいなぁ」
「だろ。綺麗じゃないのは嫌いだからな」
「あ、言いますね、でも羨ましいですよ。俺も、」
「いいから、まぁ、入れよ」
「それじゃ、お邪魔します」
「鍵をかけといてくれ」
「いや、ほんと綺麗ですよ、いいなぁ、あぁ、すみません、声大きかったですか?」
「大丈夫だろ。で、話って?」
「いや、ちょっと、やっぱり、今はやめといた方がいいかなって」
「別に気にするなよ、誰にも言わないから」
「そう、ですか?ってか、大丈夫ですか?」
「あぁ。で、何だよ?」
「いや、サークルの子の話なんですけど」
「好きな奴でもいるの?」
「実はそうなんですけど、今はまずいですか?」
「問題ないだろ、誰なんだ?」
「副部長なんですよ。で、先輩部長だし、なんとか上手く紹介してもらえないかと
思って」
「お前、年上派なの?勇気あるなぁ、やめといた方がいいぜ?」
「そうですか?すげー好みなんですけど」
「まぁ、考えとくよ。さりげなく誘ってみるわ」
「ありがとうございます。よかったー、断られたらどうしようかと思ってましたもん」
「別に断ってもいいんだけどな」
「そんなこと言わないでくださいよ」
「面倒だしなぁ」
「いやいや、先輩を信じてますから」
「わかったよ、ダメでも文句言うなよ」
「言いませんって、言うわけないじゃないですか」
「お前は調子がいいからな」
「あ、ちょっと煙草きれたんでコンビニ行きますけど、何か買ってきましょうか?」
「なら、ビールと適当に何か買ってきてくれ、金払うから」
「これ、すごくうまいですよ」
「本当かよ。そういえば、さっきCMで流れてたな」
「どうですか?うまくないですか?」
「おぉ、マジうまいな」
「あ、そういえば腕大丈夫ですか?」
「あぁ、ラケットが当たっただけだしな、ま、一応湿布張ってるよ」
「あいつ、周り、見てませんでしたからね」
「利き腕じゃなったからな。てか、腕より最近、肩が重いんだよな」
「歳なんじゃないですか?いや、冗談です。多分練習のしすぎですよ」
「だといいんだけどな。肩も重いわ、夜突然目が覚めるわで、最近疲れてるからな」
「大丈夫ですか?早く休んだ方がいいですよ」
「わかってるつもりなんだけどな、誰かに見られてるようで眠れないんだよ」
「ただの視線じゃないですか?あんまり気にしない方がいいですよ」
「そうだな、なら今日は早く寝るわ」
「それじゃ、そろそろ帰ります。長居して申し訳ないですね」
「ん、まぁ、別に気にしてないけど」
「あ、あと副部長の件くれぐれもよろしくお願いしますね」
「あぁ、わかった。明日、サークルに顔出すのか?」
「多分行くと思いますよ」
「そうか、じゃ、また明日な」
「今日はありがとうございました。彼女さんに遅くまですみませんと伝えてください」
「彼女?」
「先輩の彼女、綺麗ですね。入る時、チラッとしか見えなかったですけど」
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