Short Story…





Short Story No 81
仕事



あぁ、仕事したくねぇな。

つまんねぇ、大体、なんで休みが無いんだよ。
考えただけでイライラしてくる。

他の奴は俺を見て、高給取りでいいねとか言いやがる。
馬鹿か?
お前は今、この業界がどうなってるのか知ってるのか?
適当な知ったかぶりしやがって。あぁ、イライラする。
この前買った車だって、自宅との往復程度しか使ってねぇっていうのに。

大体なんでこの業界入ったんだ?
そうそう。昔の馬鹿な俺は、人を助けたいなんて
青臭い理想に突き動かされてたんだ。
あぁ、馬鹿馬鹿しい。

そんな理想なんて、糞ほどの役にもたたなかったよ。
ここは、腐りきってるからな。

他の奴が聞いたら、こんな俺の悩みなんて一蹴されるだろう。
立派な仕事で、責任感のある仕事で、尊敬される?
それはそうだろ。当たり前だ。
そうなるよう必死で努力して、勉強したからな。
で、その結果がこれだ。

大体、困ってる奴ってのは、その場は諂い、頭を下げるが、
自分の問題が片付けば、俺らのことなんて忘れて、
ヘラヘラしてやがる。
そしてまた、ここに戻ってきやがるんだ。

あいつらが大事なのは、自分のことだけ。
自分がどうなるかってことだけ。
そのくせ痛いだの、苦しいだの、騒ぎやがる。
ほんと、周りのことなんて、これっぽっちも考えてないんだよな。

もう、うんざりだ。
くだらない。

よし、決めた。
今日から、適当に仕事してやる。
誰が死んだって知ったことか。

今日だけで2件、明日は1件、明後日は2件も手術が入ってる。
もう、いいだろ。
昨日だってほとんど寝てねぇんだ。
手元が狂ったって、仕方ないよな。

恨むなら、大した考えもなしに、この病院を選んだ自分を恨めよ。



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