Short Story…
Short Story No 84
暴力
毎日毎日、殴られる。
周りから見れば、仲の良い四人家族に映るかもしれない。
でも、違う。
僕の思いなんて、誰も知らない、わかってくれない。
家に帰るのが、苦しくて、ただただ辛い。
止むことない、怒号、罵声、そして暴力。
悔しくて一度だけ、本気で抵抗し、歯向かった。
圧倒的な暴力。
殴られ、蹴られ、齧られた。
力の差を見せ付けられ、僕は、ただ前のめりに崩れ、倒れた。
見返してやりたいって気持ちはあるけど、
今ではもう、歯向かうのが怖い。
殴られるのが、怖い。
今日も、学校近くのある公園のブランコに座り、漠然と、風景を見てる。
見たいわけじゃなく、観察してるわけでもなく、ただ、眺めてる。
きっと僕は虚ろな目をしているはずだ。
弱々しい背中で、ただじっと、時間が過ぎるのを待っている。
家での出来事を思い出すと、体が震える。
怖くて、怖くて、体が冷たくなる。
冷や汗をかき、涙と鼻水を垂らし、無抵抗で許しを請う自分。
殴られている時の僕は、あまりにも惨めで情けない小さな人間だと、
思い知らされる。
痛いよ、苦しいよ、何で、どうして。
父さん、どうして、笑うの。
母さん、どうして、止めてくれないの。
僕は泣いているのに。
僕の体には、痣がある。
蒼く、濁った痣がある。
もっと体が大きければ、未成年じゃなければ。
立場も変わるかもしれないのに、家出だってできるのに。
まだ僕は高校に入りたてで、ただただ幼い。
原付の免許だって誕生日がまだだから取得できない。
遠い所に行きたい。
暴力なんてない世界に。
こんな現状を変えたくて、耐え切れなくて、相談したこともある。
友達には言えないから、保健室の先生に。
一笑に付され、相手にされなかった。
嘘を言ってるわけじゃないのに。
信じてもらえなかった。
強くなりたい。
そして、見返してやりたい。
どうすれば、妹に勝てるだろう。
最近、僕は、ずっと考えている。
僕の十歳年下の妹は、いつも僕を殴る。
本当に、強くて、恐ろしい。
父さんたちは、ほほえましくその光景を眺め、
「俺も、昔はよく兄さんと喧嘩したなぁ」なんて呟くんだ。
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