Short Story…
Short Story No 85
怖いこと
最近、よく、人が死ぬ。
また、殺人事件が起こった。
手口は最近流行のバラバラ。
腕を切断し、脚を切断し、腹部を切断し、頭部を切断する。
いや、もっと細かく刻んだのかもしれない。
残忍?狡猾?愛憎?理由なんてあるのかないのかわからない。
計画的だったのか、突発的だったのかもわからない。
内臓をどうしたとか、脳はどうしたとか、性器をどうしたとかもわからない。
本当のことは、犯人しか知りようがない。
わかっているのは、ただ、事件がおきたってことだけ。
殺すターゲットなんて、別に誰でも良かった。
そんなケースも数多く存在するだろう。
きっと、近いうちにまた誰かは殺され、自殺し、捨てられたりするんだろう。
犯人の運がよければ事件は発覚せずにすんだり、
刑事、民事、共に時効を迎えるかも知れない。
次はどんな手口で、誰が殺されるんだろう。
凄惨な事件が起これば、またニュースで流れる。
もっと残酷なら、もっと長い時間、ニュースで流れる。
本当に、怖いことだと思う。
別に、自分が殺されるかもしれないとか、
友達や家族や恋人や知り合いが殺されるかもしれないとか、
逆に、自分と関係する誰かが、殺人に手を染めるかもしれないとか、
実は、友達が人を殺していたかもしれないとかそんなことじゃない。
そのうちに、誰かが人を喰ったとか、ミンチにして捨てたとか、
輪切りにしたとか、目立つ場所に置いたとか、血を全身に塗りたくったとか、
チェーンソーで切り刻んだとか、生きたまま三人まとめて焼いたとか、
事件が起こるかもしれないってことでもない。
犯人が捕まっていない事件が山ほどあるとか、
遺体が見つかってないだけの事件も数多くあるとか
本当は殺されたのに、自殺に偽装され、ばれなかったなんて
真実もあるとかってことでもない。
モラルの低下、犯罪者の増加、低年齢化、そんなのは論外。
怖いのは、恐ろしい犯罪者が、警察に捕まっていないだけで、
牙を隠し、何人も、何人も、自分のすぐ近くにいるってこと。
そして、もっと怖いのは、こんな事件が、起こってるのに、すぐに事件を忘れ、
被害者の名前も、加害者の名前も、右から左へと風化し、
当たり前のように、過ぎて行く世の中と、
そんな世の中を、平然と、当たり前に暮らしてる皆が、怖い。
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