Short Story…
Short Story No 95
分別
小さな虫が湧いている。
今日は水曜日。今日と、金曜日は、燃えるゴミの回収日だ。
大体、ゴミが回収されるのは深夜1時から3時あたり。
今は12時。もう、あまり時間はない。
僕は、ゴミの確認を始める。
固く縛られた結び目を解き、乱雑なゴミ袋の中を見つめる。
むせ返る据えた臭い。
この臭いは、苦手だ。
春先になり、何匹かの小さな虫が、袋から顔を出すようになった。
いつも思う。どうして、こいつらは、この中に入れるんだろう。
密閉して結んでいるはずなのに。
そんなことを考えながら、僕はゴミを分別する。
小さな虫は、しばらく僕の周りを飛び回った後、夜の空へと消えた。
早速、ペットボトルを見つける。
燃えるゴミの袋だっていうのに。
僕は、笑い、ペットボトルを取り出し、別の袋に入れる。
人間ってのは不思議なもので、間違えて物を捨てることがある。
僕は、よく、大事なものを捨ててしまい、いつも後悔する。
昔、間違えて捨てた指輪。
どうして、捨ててしまったのか?
今回分別できていなかったのは、ペットボトルだけだった。
僕は、エレベーターに乗り、自分の部屋へと帰り、
袋からペットボトルを取り出すと、外側をきれいに洗う。
蓋をはずし、中に少しだけ水を入れる。
また蓋を閉め、何度も振り、水を捨てる。
そして、あの子が口をつけたであろう、このペットボトルを、舐める。
目をつぶり、あの、柔らかそうな肉厚の唇を想像し、
ねぶるように、舐める。
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