Short Story…





Short Story No 98




その人は、男らしくない人だった。
いつも、何かに悩んでて、友達もいない。
どこか行こうと言っても、返事はいつも曖昧。
休日に行く場所は、いつも私が決めてた。

自分に自信がもてないって、いつも言ってて、
気が弱くて、優柔不断で、欝気味で、頼りない男。
その人は、私の彼氏。

何で、私達、付き合ってるんだろ?
付き合いだした当初に感じてた感情は、もうなくなってた。
このまま一緒にいる必要性ってあるのかって考えて、
ないって結論がでた。


だから、別れてと、言った。


彼は、伏目がちに私を見て、何か呟いたけど、
よく聞こえないし、別にどうでも良かった。
私は昼に、彼は夜に、働いてる。
家賃は互いに折半し、ほとんど同棲みたいな形で暮らしてた。
だけど、ここは私の名義で借りてるマンション。

1人でここの家賃を払い続けるのは無理だから、
これを期に、引っ越そうと思った。
だから、彼に、頼んだ。
1週間以内に、出て行ってくれない、と。

彼は、いつものように、パソコンの前に座り、寂しそうに頷いた。
それから、私達は、ほとんど話をしなくなった。
1週間は、あっという間に過ぎ、今日は、約束の日。

家に帰ると、肌寒かった。
原因は、窓が、開いていたから。

彼の荷物は、もう、ない。
テーブルの上には、家の鍵と、1通の手紙。
恐る恐る、手紙を開く。
そこには、ただ一行の文字。


さよなら。


まさかと思い、窓から体を出し、下を覗いた。
彼が、いた。荷物を入れたダンボール箱も、一緒に。
彼は倒れてて、足が、変な方向に曲がってた。
きっとここから、飛び降りたのだろう。
まるで当て付けのように。

同情を引きたかったのか、悩んだ末の行動かはわからなかった。
でも、私は、面倒だったし、どうでもよかったから、窓を閉め、
化粧をクレンジングで洗い落とし、フォームで洗顔し、
化粧水と美容クリームをつけ、TVを電源を入れる。
ちょうど映画が始まってた。
昔、見たことのある、恋愛映画。
1回観たし、観なくてもいいかと思ったけど、結局、最後まで見てしまった。
感動して、涙が止まらなかった。
その後、友達に電話して、愚痴を言って、
ブログを更新して、電気を消し、ベットに横になった。

今日は、ぐっすり眠れそうだ。



back