Short Story…
Short Story No 112
運
運が悪い奴は、いる。
それ以上に、自分のことを運が悪いと思っている奴がいる。
適当に作られたフォーマットの占いで一喜一憂し、
いい事がありそうとか、今日はついてないのかな。
なんて
適当な占い師の、適当な占い。
今日は運が悪い日なんて、そんなの誰にもわかるはずない。
痴漢、残業、失敗、失態、叱責、
痴情、別離、病気、訃報、死別、
不合格に、忘れ、落とし、断られ、別れ。
そんな他人から見ればどうでもいい、くだらない理由で、ただ憂う。
どれだけ自分が悲惨か、惨めかを、
自虐的に、あたかも自慢話のように誇らしげに語り、
親指を懸命に動かし、誰かにメールを送る。
同情され、慰めてほしいのか、心配してほしいのか。
多分、両方。
そして、ただ、聞いてほしいだけ、返事がほしいだけ。
生きていれば経験を得、罪を背負う。
今日のミスは、過去の自分の責任って可能性は拭えない。
別に、大したことじゃない。
今日はついてない日だろうと、明日もそうだとは限らない。
つまらない毎日だろうが、毎日は同じじゃない。
だけど、本当に運が悪い奴は、いる。
いや、いた。というべきだろうか。
本当に運の悪い奴ってのは、
事故や何かで、もう死んでるだろうし、
それに、もっと運が悪い奴なら、きっと、産まれる前に殺されるんだ。
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