Short Story…
Short Story No 127
依存
その子はケータイ依存症で、いつだってその小さなディスプレイを覗き込む。
飽きもせずに毎日毎日、覗き込む。
メールを確認し、ネットに繋ぎ、何かを見たり、更新したり、
メールを送信し、受信し、また送信しと毎日大忙し。
情報の世界の中で、繋がりを求め、
友達や同僚、知らない誰かと、いつもメールを垂れ流す。
何の用件もなく、何の主張も無く、ただメールを垂れ流す。
重要なメッセージを送るのではなく、ただコミュケーションのため。
内容の無さに加え、用件すら特にない。
メッセージが届くたびに返信し、内容よりも、メールが届くことの方が大事。
発言でもそう。
スレッドやトピックに書いた自分の発言に、賛同がなければ孤独。
挙句、自分で自分の発言に対し、優しい言葉をかける始末。
そして、安心する。
メールが来ないと不安。返信が遅ければイライラ。
待つことも忘れ、何度も何度もセンターにメールが届いていないかを確認する。
いつもそう。
いつだって、そう。
友達といても、恋人といても、
仕事中でも、昼休みでも、
TVを見てる時も、映画を見てる時も、
もちろん、一人の時間だって。
歩く時も、急いでる時も、
自転車に乗る時も、車に乗る時も、
タクシーの乗ってる時も、電車に乗ってる時も、
ケータイは手放せない、ケータイは欠かせない。
そして、覗き込むのもやめない。
だから、その子が運転中事故に遭ったのは、当然のことなんだろう。
きっと信号なんかよりも、小さなディスプレイを、見ていたんだろうから。
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