Short Story…





Short Story No 136
罪人



みすぼらしい格好をした男。
頭には多くの白髪が混じり、顔には多くの皺が刻まれている。
深夜、眩いくらいの店内で、金を出せと、男は言った。
力ない声を振り絞り、小さな棒を店員に突きつけ、そう言った。

店員は、その男を瞬時に観察し、
男がその棒以外に凶器を持っていないことを確認すると、
レジカウンターを飛び越え、一気にその男に覆いかぶさる。

不意を衝かれた男は、大きく後ろへ倒れ、
自動ドア近くの棚に頭をぶつける。
そして、店員に馬乗りされ、顔面を殴られた。
もう一人の店員は、突然の出来事におろおろしながらも、
警察に電話をかける。

すぐにパトカーがサイレンと共に現れ、
三人の警察官が、店員に組み伏せられていた男に手錠をかける。
男の鼻からは血が、唇には傷が、後頭部は赤く腫れていた。

男はパトカーに乗せられ、警察署に連行されていく。
店員は自慢げに笑い、その足は震えている。

男の目当ては金銭ではなく、その店への恨みでもなく、
別に、誰でも、どの店でも、何の犯罪でもよかった。

金も底をつき、寒さに震え、
街の片隅や公園の隅、ビルの入り口やマンションの階段、
駅のホームや地下鉄の入り口で、暖を求めた。
行く場所も頼る身内も、仕事もない。
希望をなくし、未来を悲観し、また社会の壁の前に絶望する。

慣れ親しんだ刑務所に戻りたかった。
男は、パトカーの中、諦めたような小さな笑みを浮かべる。
悲しい笑みを浮かべる。

犯罪の罪、その罰は懲役ではなく、こんな現実なのかもしれない。



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