Short Story…





Short Story No 149
先入観



一人の女の子がいて、その子には恋人がいる。
彼女は、彼が最近浮気してるんじゃないかって疑っている。
それというのも、彼との会話してる時に、
頻繁に出てくる名前。
正確には、苗字。

彼女の気持ちを知らない彼は、頻繁にその名前を出し、
今日こんなことがあって、だとか、
アイツ、すごく性格がよくてだとか、
この前も、一緒に遊んでだとか、そんな話を楽しげに語る。
まるで、彼女と付き合い始めた当初のような笑顔で。
もしかすれば、彼女が疎外感を感じるような話題だから、
ただ、そう思うだけかもしれない。

それにしては、彼の楽しそうな顔が、
笑顔が、彼女を不安にさせ猜疑心を持たせる。
しかも、苗字だから、男なのか女なのかわからない。


夜になり、彼は眠っている。
不安な彼女は、彼の携帯電話をこっそりトイレに持ち出し、
便座を蓋の上に座り、すばやく右手を動かす。
メールフォルダはロックされていたが、アドレス帳は見れた。
彼女は、あの苗字の誰かを探し名前を確認する。
男によくある名前だった。
だが彼が、名前を偽って登録していないとは限らない。
彼女は左手で自分の携帯電話をだし、非通知で電話をかける。

数コール後、眠そうな低い声。
彼女は男だと確信し、瞬時に電話を切る。
安心した彼女はトイレからこっそりベットに戻り、
携帯電話を元の位置に戻し、満足げに眠りにつく。

しかし、苗字だけで性別がわからないのと同様に、
声だけでも確実な性別なんてわからない。
そもそも、同性だから大丈夫なんて、そんな保証はない。



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