Short Story…





Short Story No 150
害虫



夏が近づいてくる。

少しずつ気温が上がり、室内は夜でも少し不快な温度。
エアコンをつけるほどの暑さではなく、彼女は窓を開ける。
開いた窓から入り込む夜風が、カーテンを揺らす。
外にいれば肌寒く感じる風も、室内にいれば心地よく感じる。
空気も循環され、湯上りの火照った彼女の体を、優しく冷やす。

マンションの高さゆえか、季節がまだ時期でないためか、
まだ蚊のような害虫も姿を現すことなく、半分ほど開いているカーテンからは、
美しい月も見える。

彼女はドレッサーの椅子に座り、ドライヤーで髪を乾かす。
頭を軽く振り、タオルでまた軽く髪を拭き、
ドレッサーの上に置いてある乳液と化粧水を肌につける。
そして、鏡に自分の顔を映し、左右に首を動かし、
自分の顔を確認する。
そしてバスタオルのまま、足を椅子に乗せペディキュアを塗り始める。


肌寒くも、涼しげな夜風を浴び、
男は暗闇の自室の中から、彼女の部屋を覗く。
その顔を、その肌を、その一挙一動を食い入るように覗く。
ただじっと。
今はまだ、ただ静かに覗くだけ。



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