Short Story…





Short Story No 155
待つ男



近づいてくる。
ハイヒールの音が、甘い香水の香りが。

闇の中、目を凝らす。
あどけない顔に似合わない化粧。
茶に染まった髪。
鼻と臍に飾られたピアス。
誰でも持ってる茶色のモノグラムのバック。
左手に挟んだ煙草。
右手にはケータイ、幾重にも繋がれたストラップ。

ダメだな。
目をそらし、下を向く。

こっちに気付いたのか、ハイヒールを鳴らす音が早くなる。
頭悪そうな話し方。
その声も恐れのせいか大きくなる。

そいつは、目の前を足早に通り過ぎていく。
聞きたくもない声、会話。
その少し後、さっき変な奴がいてさー、なんてそいつの声。
聞こえてるんだよ。馬鹿。

声をかけられるとでも思ったのか?
なぁ、自分の姿を見たことあるの?

別に選り好みしてるわけじゃない。
清楚で、おとなしそうで、すれてないような子が理想だ。
歳は別に気にしない。
電話してるのは、当然マイナス。
別に、我侭は言ってないつもりだ。
捕まるリスクを考えたら、もっと金もってそうな奴を狙うのは当然のことだろうし。



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