Short Story…





Short Story No 158
肝試し



この前友達と肝試しに行った。
男三人、女二人。
女の子とはさっき知り合ったばかり。
車の中で盛り上がって、肝試しにでも行かない?って話になった。

着いた場所はケータイの電波も届かないような田舎で、
廃墟になった病院。

噂では、誰かの叫び声が聞こえるとか、
血まみれの看護婦が追いかけてくるなんて噂もあったけど、
僕は別に幽霊とか信じてないし、
噂なんてただの作り話だろうとしか思ってなかったから、
別に怖いこともないだろうと高を括っていた。

中に入ってみると埃と薬品の匂い。
ベットや棚なんかも、古びてはいるがそのまま残っている。

なんてことはない、大したことはない。
僕はそう思い込もうとする。

全員で行っても全然怖くないし、一人ずつ行こうぜ。
そう友達は言った。
せっかく女の子もいるんだし、
二人組と三人組に分ければいいのにと思ったが、
口には出さなかった。

行く順番はジャンケンで決めた。
僕以外の全員がグーで、僕だけチョキ。
せめて二番手なら、今より余裕があったはずだけど、
闇の中に一人というのはやはり心細い。

目的地は手術室。
どこにあるかはわからないけど、懸命にそこを目指した。
なかなか見つからず、次第に足早になっていく。
随分歩き回ったが、やっと見つけた。
ここに来た証拠として財布から小銭を出し、手術台の上に置いた。

外で、何かが光っている。
僕は急に怖くなり、急いで来た道を引き返す。
情けないことに、最後の方は走ってしまっていた。

急いで病院玄関のドアを開ける。
そこには誰もいなかった。
ただ、車の走り去った跡だけが残っていた。



back