Short Story…
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Short Story No 167
君の横顔
美しい人がいて、目を奪われた。
その横顔に。
ほんの一瞬で。
一目惚れというのは経験なかったけれど、
きっと、こんな感じなのかもしれない。
僕は、少し開いていた窓をゆっくりと全開にする。
心地よい風が僕の頬に触れ、
その人の長い髪も揺らした。
ライトブラウンの髪が風に流され、
光で透けたその髪は、オレンジ色に輝いている。
短い時間、見つめてた。
こっちに気づくんじゃないかと心配したけれど、
その人は携帯電話で誰かと話すのに夢中で
僕の視線に気付かないみたい。
短い時間、見つめてた。
よほど面白い話題だったのだろう。
大きな笑い声。
自分の声が大きかったことに気付いたのか、
笑った後に辺りを見回すその人と目が合った。
驚いた表情。
僕は、気恥ずかしさから慌てて目を逸らし、
前方に視線を戻す。
遅かった。
誰か撥ねてしまったみたいだ。
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