Short Story…
Short Story No 193
隣人の声
男が友人の部屋に遊びに行って思ったのは、
この部屋も壁が薄いってこと。
だからわざわざ耳を欹てなくても、隣人の声が聞こえてくる。
若い女の声。
きっと電話でもしているのだろう。
会話の内容はよくわからないが、
電話相手の誰かに向かって質問をしたり、同意を求めたり、
相槌をうち、楽しそうにケラケラと笑っている。
隣で男の友人が笑った。
ネットで面白い記事でも見つけたのかと思えば違った。
隣から聞こえる声と会話して笑っていた。
男も笑った。
自分と似ていたから。
互いに似たようなマンションに住み、
隣から聞こえてくる声も似てる。
少し違うのは、男の部屋には隣人なんていないということ。
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