Short Story…
Short Story No 222
ストーカーの居場所
随分と前、私はストーカー被害にあったことがある。
今でもドアを叩く音や、暗闇での足音を聞くと、
体がこわばってしまう。
犯人は捕まった。
同級生の男性だった。
面識はあまりなく、言葉を交わしたことも殆どない。
受講する講義だけが唯一の接点だった。
大した罪に問われたわけではないが、
私の前に姿を見せることはなくなった。
もしかしたら、私が気付かなかっただけかもしれない。
今の彼と付き合って何年になるだろう。
今ではもう同棲中で、今日も隣で眠っている。
静かに寝息を立てるその顔は、とてもあどけない。
彼といると安心できる。
物音で目が覚めた。
遮光カーテンのせいで、夜更けなのか朝方なのかよくわからない。
寝室の引き戸隙間から微かな、本当に微かな光が漏れた。
きっと携帯電話のバックライトの光だろう。
枕元においてある眼鏡をかけ、そっと覗いた。
彼は、何かを見ているらしい。
目を凝らした。
彼の指の隙間から見覚えのあるブックカバーが見える。
私の手帳だ。
その時に悟った。
外だけじゃない。
部屋の中にもストーカーはいるのだと。
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