Short Story…




Short Story No 224
同一


「写メ交換しない?」
自分からそう送って了解を取り付け自分の写真を送ったものの、不安だった。
返信が途絶えたらどうしよう。
でもそんな心配は杞憂に終わった。

送られてきた写メ。
驚いた。
憧れの芸能人にそっくりだったから。

私はこの瞬間その人に好意を持った。
愚かな言葉で表すなら、恋に落ちたのかもしれない。

その人は同い年で、私が住んでいる所から随分遠い場所に住んでいる。
だから今まで会ったことは無かったし、連絡もメッセージと電話のみのやりとり。
それでも楽しかった。

しばらくそんな状況が続いた。
最初にメッセージをもらってから随分と時間も過ぎた。

会ってみたい。

それはとても自然な欲求だったと思う。
その人の誕生日が近づいていた。
プレゼントを贈りたいから。
そんな理由をつけ住所を聞いた。

二日後、新幹線にのり、電車を乗り継いで会いに行った。
プレゼントを直接渡したかったから。
正直に言えば、ただ会ってみたかっただけだけど。
ケータイで地図を確認し、迷うことなく彼の住む家に着いた。
少し古いこじんまりとしたマンション。
入り口はオートロックじゃなかったから簡単に部屋の前までついた。

やっぱり帰ろうか。
そんな思いが頭をかすめる。
指が震えた。
でもここで帰ったら帰りの新幹線の中できっと後悔する。

インターフォンの前で行き来する指。
何度も宙を往復する。
意を決してインターフォンを押した。

空気が揺れ、くぐもった足音が近づいてくる。
直後、ドアの施錠を外す音。
出てきたのは、まったく知らない顔の男。
ただ、声だけは同じだった。




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