Short Story…




Short Story No 231
すれ違い


街灯もない暗い路地。
こんな場所でも、一人で歩く女性にすれ違う時がある。
リズムを刻むような規則正しいピンヒールの音。
遠くからでもわかる。

こんな誰も来ない道。
ひと気もない道。
夜とも朝ともつかないこんな時間。

怖くはないのか?
いきなり襲われたらどうする?

たまに恐ろしく思う場合がある。
世の中にはおかしい奴なんてたくさんいるから。

今だって妙な奴が前にいる。
全身黒ずくめの服、さらにはマスクまでしている。
少し緊張しながらそいつとすれ違う。

特に何事もなかった。
当たり前といえば当たり前かもしれない。
ほっと息を吐き、胸をなでおろす。

ただ、胸をなでおろし安心するのは早いのかもしれない。
人は、後ろから襲われるのが一番多いのだから。




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