Short Story…
Short Story No 237
跡
さっき、気付いた。
部屋を仕切る引き戸。
天井近くにある木の鴨居部分に何かの跡。
それほど多くない。
7つか8つ程度。
何かを隠すようにその跡はあった。
触ってみようと手を伸ばしたが届かない。
ベランダに置いてある脚立を持ってくることにした。
脚立に乗り観察してみると、
どうやら穴を埋めた跡のようだ。
きっと修繕した結果だろう。
壁面のクロスと違い、簡単に取り替えることができず、
埋めて色を塗ったんだろう。
気付いたのは、きっと塗装がはげてきたから。
この部屋は収納スペースが少ない。
衣類でも掛けていたんだろうか。
それにしても跡は密集している。
これじゃ複数のハンガーを引っ掛けるのも難しい。
それに、部屋と部屋を仕切る部分に洋服が掛かっていたら、
邪魔なんじゃないだろうか。
気付いたのは、きっと疲れていたから。
釘を打ったような跡。
誰か首でも、吊ったんだろうか。
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