Short Story…
Short Story No 247
紙袋の中身
自動ドアが開いた。
いらっしゃいませと私が言う前に、
大きな荷物を持った女性が駆け込んで来た。
「あの、変な男に追われているんです、匿ってください」
いや、匿ってくれと言われても……
突然のことに私が戸惑っているとその女性は周囲を見回し、
「ならトイレに隠れさせてください、すみません」
私の返事を聞かずトイレに駆け込んだ。
鍵をかける大きな音が聞こえた。
変な男。
いったい何があったのだろう?
それから数分後にその変な男らしき男性が入店してきた。
「大きな紙袋を持った女性を見かけませんでしたか?」
制服と帽子、彫りの深い顔で少し強面だが、
全く怪しい風体には見えない。
私は、見てませんねと嘘を答える。
困っている人を助けたいと思ったわけじゃない。
係わり合いになりたくなかったからだ。
ありがとうございますと男性はすぐ店を出る。
隣の店にも聞くつもりだろう。
それから10分が過ぎたが、女性はトイレから出てこない。
今はお客さんがいないからいいが、
トイレに篭られるのは迷惑なので、トイレのドアノックし、
もう大丈夫ですよと声をかけた。
出てきた女性は震えていた。
それでも気丈に頭を下げ、
「なんとお礼を言っていいか、本当にありがとうございます」
そう言って何度も頭を下げ店を出て行った。
あの紙袋には何が入っていたのだろう?
さっきの警官に匿っている場所を教えていれば、
中身を見せてくれただろうか?
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