Short Story…





Short Story No 70
できたこと



この前、笑える奴がいてさ、
いやー、なかなか不謹慎な話なんだけど。
目の前で事故があってさ、すげーの。
キィィィィィ、ドガって車が誰か轢いちゃってさ。
70キロはでてたな、あれは。
その瞬間は見てねぇけどあの音からして多分70キロくらい?

まぁ、それ子供だったんだけどさ。
轢かれたやつの足とかわけわかんない方向に曲がっちゃってるし、
鼻血でてるわ、動かねぇわで、あ、ヤバイなって思ってたらさ、
運転手が、大丈夫か、オイ大丈夫かって駆け寄ってきてんのよ。
オイオイ、お前が轢いたんじゃねぇかよアホか。とか思ってたらソイツ、
何考えたか知らねぇけど、子供をブンブンしちゃってんの。

ブンブンって言っても振り回したりしたわけじゃねぇぜ。
こう、肩を持ってさ、前後に振る感じ?
で、子供、首グラグラさせて、やられるまま。
可哀想だろ。意識無かったんだろうな。グターってしてたからな。
逆にトドメだろ!とか思って見てたら、その運転手の手が、赤く染まってきてんのよ。

あ、これ更にヤバイんじゃねぇの?
でさ、案の定、後頭部のトコから血が垂れてきて、
子供、顔真っっっ青。
しかたねぇから俺が、救急車でも呼んでやるかなんてって思ってたら
後ろの奴が、既に電話してんのな。
これがまたうるせぇんだ。お前パニくるなよ、マジで。って感じでさ。
しかも、そいつがまた突っ込み所満載なわけよ。

ここはですね、えー何丁目ですかね、あのコンビニの近くです。
はい、え、二丁目か、三丁目辺りのですね、あ、はい。ビル?
いや、ないと思うんですけど。ちょっと待ってくださいね、見てきます。

いやいやお前、住所知らねぇなら電話するなよって。思ってたら、
突然、運転手に近づく男がいてさ。いかにもリーマンみたいな奴
で、そいつが注意したんだよ。やめろ!って。

まぁ、やめろって言ったのかどうかは知らないんだけどさ。
まぁ、運転手もハッ!ってなって子供を寝かせたから
多分、やめろって言ったんじゃねぇかな。

おーやるじゃん。すげー、これで、この子供も何とかなるんじゃねって思ってたら、
そいつ、携帯取り出したんだ。
俺の後ろの奴が救急車呼んでるぜ?って言いたかったんだけど、
まぁ、さっきの奴より、こいつが電話した方が
ぜってー早いよなって思って黙って見てたら、そいつ、しゃがんでさ。
携帯で写メ撮ってるんだぜ?笑った笑った。
お前、写真撮りたいだけかよ!ってさ。

ん?救急車?
結構時間かかったな。子供?死んだんじゃねぇの。
他の奴が、電話すればよかったのにな。



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